複合原材料・添加物に隠れるアレルゲン:表示ルール(2026年)

日本の食品ラベルは、よくできています。義務の9品目なら、ソースの中に入っていても、添加物の原料でも、原則として書かれます(香料など一部に例外があります)。けれど、その外側にある推奨の20品目は話が別です。ラベルの決まりによっては、中身が名前の中にまとめられて、ラベルからは読み取れないことがあります。私がお弁当の事業でいちばん怖かったのが、ここでした。
複合原材料とは?
複合原材料は、2種類以上の原材料からできている原材料のことです。お弁当なら、ハンバーグのソース、ポテトサラダのマヨネーズ、ハム、醤油などがそうです。ラベルには、名前のあとの括弧の中に、中身が重さの多い順に書かれます。
ソース(砂糖、醤油、トマトケチャップ、醸造酢、その他)
中身を書かなくてよい場合
食品表示基準では、複合原材料の中身を、次の場合に省略できます。
| 場合 | ラベルの見え方 |
|---|---|
| 複合原材料の重さが、製品全体の5%未満 | 「ソース」「ドレッシング」とだけ書かれる |
| 名前から中身が明らか(マヨネーズなど) | 「マヨネーズ」とだけ書かれる |
| 中身が3種類以上あり、複合原材料の中で3位以下かつ5%未満のもの | 「その他」にまとめられる |
添加物にも同じような仕組みがあります。
- 一括名:乳化剤、調味料(アミノ酸等)、香料、膨張剤、pH調整剤などは、何を使ったかを個別に書かずに、まとめた名前で書けます。
- 表示の免除:「加工助剤」と「キャリーオーバー」は、添加物として書かなくてよいことになっています。
キャリーオーバーとは
キャリーオーバーは、原材料を作るときに使われた添加物が、その原材料ごと持ち込まれたものです。最終的な食品の製造では使われず、残っている量も、その食品の中で効果を出せる量より明らかに少ない場合に、表示が免除されます。
- キャリーオーバーになる例:保存料(安息香酸)を含む醤油で、せんべいに味をつける。せんべいの中では保存料が効果を出さないので、書かなくてよい。
- キャリーオーバーにならない例:着色料の入ったメロンソースをアイスに使う(アイスでも色が見える)。発色剤を使ったハムをポテトサラダに入れる(ハムが形のまま残っている)。最終の食品でも色・味・香りの効果が残るものは、キャリーオーバーになりません。
加工助剤とは
加工助剤は、食品を作る途中で使うが、完成した食品にはほとんど残らない添加物です。次のどれかにあたる場合に、表示が免除されます。
- 食品が完成する前に取り除かれる(例:油を搾るときの抽出溶剤ヘキサン)
- 食品にもともと含まれる成分に変わり、その量をはっきりとは増やさない(例:ビールの仕込み水の調整に使う炭酸マグネシウム)
- ごくわずかしか残らず、食品に影響しない(例:豆腐を作るときの泡消しに使うシリコーン樹脂)
どちらも、添加物としては書かれません。ただし次の章のとおり、義務の9品目に由来するものなら、アレルギー表示は必要です。
義務の9品目は、原則として隠れない
ここは、ラベルが比較的頼りになるところです。アレルギー表示は、原材料名とは別のルールで決まっています。複合原材料の中身を省略しても、添加物の名前をまとめても、加工助剤やキャリーオーバーでも、義務の9品目(えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生、カシューナッツ)が含まれていれば、表示が必要です。ただし、特定原材料に由来する香料(香りの成分)や、抗原性が認められない(アレルギーを起こすことが認められない)もの、たとえば精製が完全な乳糖は、例外として表示の義務がありません。お酒も、特定原材料を原料にしていても表示の義務がありません。
添加物の場合は、「乳化剤(乳由来)」のように、名前のあとに由来が書かれます。
推奨の20品目は、名前の中に隠れることがある
問題は、推奨の20品目です。表示は「可能な限り表示するよう努める」とされているだけなので、メーカーが書かなければ、次のようなことが起こります。
| 実際に入っているもの | ラベルに書かれること |
|---|---|
| ごまと大豆を使ったドレッシング(製品の4%) | ドレッシング |
| 大豆由来のレシチン(乳化剤) | 乳化剤 |
| ゼラチンを使ったソース(その他にまとめられた中身) | ソース(…、その他) |
どれも、ルールどおりのラベルです。違反ではありません。けれど、ごまや大豆、ゼラチンのアレルギーがある人には、そこに入っていることが分かりません。
手がかりは1つあります。表示の対象が「特定原材料9品目」か「特定原材料に準ずる20品目を含む29品目」かを、表示欄の外に書くよう努めることになっています。「29品目」と書かれた商品は、表示の対象を推奨の品目まで広げている、ということです。29品目の一覧は、アレルギー表示一覧にあります。
なぜ、ここまで見えにくいのか
アレルゲンの情報は、原料のメーカーから加工品のメーカーへ、加工品のメーカーからお弁当を作る人へと、書類で受け渡されていきます。消費者庁も、特定原材料が入っているかどうかは書面で確かめ、記録を残すよう求めています。
私たちがお弁当の事業をしていたとき、推奨の品目まで確かめようとすると、加工品のメーカーすべてに問い合わせ、そのメーカーがさらに先の仕入れ先に確かめる、という作業になりました。大手のメーカーはきちんと把握していましたが、中小のメーカーでは曖昧なこともありました。書類も人が作るものなので、記入ミスを見つけたこともあります。

WE TABLEの管理栄養士は、大手食品メーカーで、こうした表示の確認にも携わっていました。私もそこから多くを学びました。ただ、私の感覚では、ここまで把握している料理人はかなり少ないと思います。そもそも、ラベルから見えなくなるものがあることを知らない人も多いのではないでしょうか。
見えないものに、どう向き合うか
- 推奨の品目にアレルギーがある人:表示欄の外に「29品目」と書かれた商品を選ぶか、メーカーのお客様窓口に問い合わせてください。原料が少なく、中身が見える食品のほうが確かめやすくなります。
- お店で食べるとき:料理人も、仕入れた加工品の中身をすべて知っているとは限りません。「入っていません」と言われたら、何で確かめたかを聞いてみてください(飲食店でアレルギーを伝える方法)。
- 料理を作る側:加工品の推奨の品目は、ラベルだけでは分かりません。仕入れ先から原材料の詳しい資料をもらい、推奨の品目まで書かれているかを確かめてください。
義務と推奨の違いや、どこまで表示の義務があるかは、アレルギー表示の義務はどこまで?にまとめています。
よくある質問
複合原材料とは何ですか? 中身は必ず書かれますか?
2種類以上の原材料からできている原材料のことで、ソース、マヨネーズ、ハム、醤油などです。ラベルでは「ソース(砂糖、醤油、…)」のように、名前のあとの括弧の中に中身が書かれます。ただし、製品に占める重さが5%未満の場合と、マヨネーズのように名前から中身が明らかな場合は、中身を省略できます。中身が3種類以上あるときは、3位以下かつ5%未満のものを「その他」とまとめることもできます。
複合原材料の中身を省略したら、アレルゲンも書かれなくなりますか?
義務の9品目は書かれます。アレルギー表示は別のルールで、中身を省略しても、特定原材料が含まれていれば表示が必要です。一方、推奨の20品目は表示が努力にとどまるので、書かれないことがあります。
添加物の「乳化剤」から、大豆が入っているか分かりますか?
分からないことがあります。義務の品目に由来する添加物は「乳化剤(乳由来)」のように由来が書かれますが、推奨の大豆に由来する場合は、書くかどうかがメーカーの判断です。
キャリーオーバーとは何ですか?
原材料を作るときに使われた添加物が、その原材料ごと最終的な食品に持ち込まれ、効果を出せない量しか残っていないものです。たとえば保存料を含む醤油でせんべいに味をつけた場合、せんべいの保存料は書かなくてよいことになっています。ただし、義務の9品目に由来するものならアレルギー表示は必要です。
推奨の品目まで表示している商品は、見分けられますか?
手がかりがあります。表示の対象が「特定原材料9品目」か「特定原材料に準ずる20品目を含む29品目」かを、表示欄の外に書くよう努めることになっています。「29品目」と書かれていれば、表示の対象を推奨の品目まで広げているという意味です。




