日本の醤油はグルテンフリー? たまり・白醤油・小麦不使用の見分け方

日本の醤油はグルテンフリー? 5つの種類と小麦
日本の醤油は、国の規格(JAS)で5つの種類に分けられています。違いは、大豆と小麦の割合と、造り方です。
| 種類 | 規格上の原料 | 小麦は? |
|---|---|---|
| こいくち(濃口) | 大豆に、ほぼ同じ量の麦 | 入る。国内の出荷量の8割以上がこれ(2024年) |
| うすくち(淡口) | 大豆に、ほぼ同じ量の麦(小麦グルテンを加えることも) | 入る |
| たまり | 大豆だけ、または大豆に少量の麦 | 入るものと入らないものがある |
| さいしこみ(再仕込み) | 大豆に、ほぼ同じ量の麦 | 入る |
| しろ(白) | 少量の大豆に麦(小麦グルテンを加えることも) | 小麦が主原料 |
つまり、日本の食卓や飲食店でふつうに「醤油」と呼ばれているもののほとんどは、小麦を原料にしています。しかも、色の淡い「白醤油」は、むしろ小麦が主役です。見た目の色で判断することはできません。
「たまり」なら小麦なし、とは限らない
海外では「tamari」が、小麦を使わない醤油の代名詞のように紹介されることがあります。たしかに、たまり醤油は大豆を中心に造る醤油で、百科事典にも小麦を使わない醤油として説明されています。
ただ、日本の規格が定めているのは「大豆だけ、または大豆に少量の麦を加えたもの」です。少量の小麦が入っていても、たまり醤油と名乗れます。
「たまり醤油」という名前だけでは、小麦を使っていないとは限らない。
確かめる方法は、1つだけです。ラベルの原材料欄を見て、「小麦」があるかどうか。日本では小麦は表示が義務づけられている品目なので、容器包装された醤油なら、使っていれば必ず書かれています。ただし、飲食店の料理や、量り売り・その場で詰める惣菜には、アレルギー表示の義務がありません(アレルギー表示の義務はどこまで?)。
この思い込みは、作る側にもあります。日本の店のシェフと話していると、「小麦の入っていない醤油=たまり醤油」と考えている人が少なくありません。本当に小麦を避ける必要があるときは、言葉で確かめるだけでなく、使っている醤油のパッケージを見せてもらってください。きちんとお願いすると、醤油に限らず、使っている商品のパッケージの裏を見せてくれる店は、案外多いものです。
発酵で、グルテンは消える? 国によって答えが違う
ここからが、醤油のいちばん難しいところです。
醤油は、大豆と小麦に麹菌をつけ、塩水と一緒に長い時間をかけて発酵させて造ります。

その過程で、小麦のたんぱく質は細かく分解されます。そのため、ふつうの醤油にグルテンがどれだけ残っているかについては、専門家のあいだでも判断が分かれています。
- スウェーデンとフィンランドのセリアック病の患者団体は、昔ながらの製法で造った小麦入りの醤油をグルテンフリーとして扱う判断をしており、ノルウェーの団体もそれに加わったと報告されています。
- イギリスの患者団体(Coeliac UK)は、小麦で造った醤油はセリアック病の人に適さないとし、グルテンフリーと表示された醤油を選ぶよう勧めています。一部のたまり醤油も適するとしています。
- アメリカの食品医薬品局(FDA)は、発酵食品については、発酵前の原料がグルテンフリーの基準を満たしている必要があるという立場です。発酵したあとのグルテンを正確に測る方法がないためです。小麦を原料にした醤油に「グルテンフリー」と表示することは、認められていません。
日本には、「グルテンフリー」という表示についての法的な定義や基準がありません(国の規格があるのは、米粉の「ノングルテン」だけです)。あるのは、小麦をアレルギー表示の義務の対象にするルールです。日本で「グルテンフリー」と書かれた醤油を見たら、その多くはメーカー独自の基準による表示です。
小麦アレルギーについては、日本に目安があります。厚生労働省の保育所向けガイドラインは、醤油の小麦のたんぱく質は発酵の過程で分解されるため、基本的には小麦アレルギーでも醤油を摂取できるとしています。ただし、これは「基本的に」の話です。重い小麦アレルギーの人は、主治医の指示に従ってください。
どの線に立つかは、あなたの国の基準と、あなたの主治医との相談で決めてください。この記事で言えるのは、「ふつうの日本の醤油には、原料として小麦が入っている」という事実までです。
醤(ひしお)から、銚子と野田へ
醤油のはじまりは、穀物などに塩を加えて発酵させた「醤(ひしお)」だとされます。鎌倉時代、中国から帰った禅僧の覚心が径山寺(きんざんじ)味噌の造り方を伝え、その桶の底にたまった汁がおいしいことから、紀州・湯浅で調味料として売り出された、という話が伝わっています。ただし、これは「そう伝えられている」という言い伝えです。

江戸の町では、関西で造られた醤油が「下り醤油」として珍重されました。やがて関東でも醤油造りが盛んになり、江戸時代の中ごろからは、千葉の銚子や野田の醤油が江戸に大量に出回るようになります。今も、日本の代表的な醤油メーカーのいくつかが、この地域に本拠を置いています。

醤油と砂糖やみりんを合わせた甘辛い味つけが料理の本に広く見られるようになるのは、1800年ごろからです。そこから日本の料理の多くが、醤油の味を土台にして組み立てられていきました。そばのつゆも、すき焼きの割下も、その流れの上にあります。
醤油は、日本の料理のどこにいるか
醤油が隠れている場所は、思っているよりずっと多くあります。
| 料理 | 醤油の入り方 |
|---|---|
| すし・刺身 | 小皿で添えられる。すしの「ツメ(煮詰め)」にも使われる |
| そば・うどん | つゆ |
| すき焼き・煮物 | 割下・煮汁 |
| 照り焼き・焼き鳥のたれ | たれ |
| 唐揚げ | 下味 |
| ラーメン | 醤油ラーメンのスープ、チャーシューのたれ |
| せんべい | 味つけ(米のお菓子でも、醤油味なら小麦が入っていることが多い) |
| ポン酢・めんつゆ | 原料に醤油 |
すしで醤油以外に小麦が入る場所(酢、ツメ、玉子焼きなど)は、寿司はグルテンフリー?に書いています。

小麦を使っていない醤油を、どう手に入れるか
正直に言うと、日本で小麦を使っていない醤油を見つけるのは、思ったより大変です。私が東京の渋谷区に住んでいたころ、スーパーで醤油の棚を端から裏返して原材料を見ても、小麦不使用のものは1つあるかどうかでした。そして、たまたま見つけたその1本は、たまり醤油だった気がします。都心のスーパーは小さく、品ぞろえも限られています。大きなスーパーなら、もう少し選択肢があります。
選ぶときは、次の2つを確かめてください。
- 原材料欄に「小麦」がないこと
- 「グルテンフリー」の表示があっても、日本では法的な基準がないので、原材料欄で確かめること
外食のときは、小さな容器に入れて持ち歩く人もいます。持ち込みへの考え方は店によって違うので、使う前にひとこと断ってください。
店で使える日本語フレーズ
伝え方の全体は、日本の飲食店でアレルギーを伝える方法にまとめています。
WE TABLEの考え方
醤油は、日本の料理の「川」のようなものです。上流で一度入れば、下流の多くの料理に流れていきます。だから、醤油を避ける必要がある人にとって、日本の外食は簡単ではありません。私たちは「安全です」とは言いません。できるのは、どの料理に醤油が入り、どの醤油が使われているかを確かめ、伝えることです。JOURNEYでは、醤油を含めて、どの料理に何を使うかを事前にシェフと確かめ、どこまで分けられたかという線引きをそのまま開示します。
よくある質問
日本の醤油はグルテンフリーですか?
ほとんどは違います。日本の醤油の大半を占める「こいくち」は、大豆とほぼ同じ量の小麦を原料にしています。小麦を避けるなら、原材料に小麦がない、または「小麦不使用」「グルテンフリー」と表示された醤油を選んでください。
たまり醤油はグルテンフリーですか?
名前だけでは判断できません。日本の規格では、たまり醤油は大豆だけ、または大豆に少量の麦を加えて造るものとされています。原材料欄に小麦があるかどうかを確かめてください。
キッコーマンの醤油はグルテンフリーですか?
通常のこいくち醤油は小麦を使っています。キッコーマンは国や地域によって、小麦を使わないグルテンフリーの醤油も販売しています。購入する国の商品の表示を確かめてください。
日本のスーパーで小麦を使っていない醤油は買えますか?
買えますが、数は多くありません。都心の小さなスーパーでは、棚に1つあるかどうかということもあります。大きなスーパーのほうが見つけやすく、ラベルの原材料欄に「小麦」がないことを確かめて選んでください。
耳で聞く
この記事の要点を、音声で聞けます(英語・約2分、AI音声)。
出典
- 農林水産省「しょうゆの日本農林規格(JAS 1703:2021)」
- 日本醤油協会・しょうゆ情報センター「醤油の統計資料(2024年実績)」種類別出荷数量
- 厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」(醤油と小麦アレルギー)
- 宇都宮由佳「甘い醤油の歴史」(農畜産業振興機構『砂糖類・でん粉情報』2022年9月号)
- コトバンク「しょうゆ」(日本大百科全書ほか)
- Gluten Free Watchdog「Traditionally brewed soy sauce: Is it actually free of gluten peptides?」(2025)
- Coeliac UK「Is Chinese soy sauce gluten free?」
- 農林水産省「ノングルテン米粉の製造工程管理JAS」
- Kikkoman USA「Gluten-Free Soy Sauce」
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
- 小林大樹『Gluten-Free Japan: Between the Kitchen and the Table』(近刊)




