日本のお酒はグルテンフリー? ビール・ノンアル・焼酎・紹興酒・割り材まで

江戸時代の美人画。2人が顔を寄せ、一人が黒い銚子から、もう一人の持つ朱塗りの盃に酒を注いでいる
喜多川歌麿「当世好物八景 酒好」。盃に酒を注ぎ、酒を楽しむ江戸の人びと。 喜多川歌麿「当世好物八景 酒好」(1801〜04年頃)/アメリカ議会図書館/パブリックドメイン 出典

日本のお酒はグルテンフリー?

まず、日本の飲食店でよく出るお酒を、表にまとめます。

お酒 麦・小麦は? ひとこと
ビール・発泡酒 多くは大麦の麦芽が原料 グルテンフリーではないと考える
白ビール・一部のクラフトビール 大麦に加えて、小麦や小麦麦芽を使う 小麦アレルギーの人にも関わる
ノンアルコールビール 多くは麦芽や麦芽エキスを使う 麦芽を使わない製品もある
ホッピー 麦芽とホップ 焼酎をこれで割って飲む
焼酎・ウイスキー・ジン・ウォッカ 原料が麦のことがある。ただし蒸留酒 主な団体はグルテンフリーと見ている
日本酒 米と米麹が基本 原材料名を表示(清酒の製法品質表示基準)
ワイン・シードル 麦は使わない Coeliac UK はグルテンフリーとしている
紹興酒 もち米と小麦 中華料理店で出る
マッコリ 米や小麦と麹 韓国料理店で出る
割り材・カクテル 麦茶割り、ホッピー、ビールを使うカクテル お酒そのものより見落としやすい

ただし、この表を使う前に、知っておいてほしいことがあります。日本では、お酒の缶やボトルが、小麦について何も教えてくれないことがあるのです。

日本では、お酒にアレルゲン表示の義務がない

日本の加工食品には、小麦や卵、乳などのアレルゲンを表示する義務があります。ところが、お酒はその対象外です(ほかに対象外になる食品はアレルギー表示の義務はどこまで?にまとめています)。食品表示基準では、お酒は原材料名の表示も義務づけられていません。

江戸時代の美人画。座った女性の後ろに、銘柄の印が入った酒樽が置かれている
喜多川歌麿「名取酒六家選」より。人気の酒の銘柄を、吉原の遊女と組み合わせて描いたシリーズ。後ろの酒樽に銘柄の印が見える。 喜多川歌麿「名取酒六家選」(1794年頃)/メトロポリタン美術館/CC0 出典

実際には、多くのお酒で原材料を確かめることができます。ビールは「ビールの表示に関する公正競争規約」で、清酒(日本酒)は国税庁の「清酒の製法品質表示基準」で、原材料名を表示することになっています。

それでも、お酒にはアレルギー表示の義務がないため、加工食品のような「(一部に小麦を含む)」という注意書きは基本的にありません。白ビールの原材料欄に「小麦」と書いてあっても、それは注意書きとしてではなく、原料の一つとして並んでいるだけです。

これは、海外から来た人ほど戸惑う点かもしれません。EUとイギリスでは、お酒は原材料の一覧を省略できますが、アレルゲンは「Contains: Barley」のように表示する必要があります。カナダでも、包装されたビールには、小麦や大麦などの表示が求められます。オーストラリアとニュージーランドでも、お酒にアレルゲンの表示が必要です。ただし、ビールや蒸留酒に含まれる小麦や大麦などは、表示しなくてよい例外になっています。アメリカは日本に近く、お酒のアレルゲン表示は今のところ任意で、義務化の規則案が2025年に出された段階です。

国・地域 お酒のアレルゲン表示
日本 食品表示基準では義務なし(原材料名も。清酒とビールは、別の基準・規約で原材料名を表示)
EU・イギリス 義務あり(原材料の一覧は省略できる)
カナダ 包装されたビールは、小麦や大麦などの表示が必要
オーストラリア・ニュージーランド 義務あり。ただし、ビールと蒸留酒の麦類は例外
アメリカ 任意(義務化は規則案の段階)

さらに飲食店では、ボトルや缶を目にしないことがほとんどです。生ビールはサーバーから注がれ、焼酎や日本酒はグラスや徳利で出てきます。だから店では、表示を探すより、聞くことが必要になります。

「グルテンフリー」という表示そのものの各国の基準は、日本の「グルテンフリー」の意味で比べています。

ビール・発泡酒・ノンアルコールビール

日本の酒税法では、ビールは麦芽の比率が50%以上のもの、発泡酒はそれより少ないか、ビールに使えない副原料を使うものです。2023年10月からは、いわゆる「新ジャンル」(第三のビール)も、酒税法上は発泡酒に含まれます。多くは大麦の麦芽や麦由来のスピリッツを使っていますが、麦芽を使わず、豆のたんぱく質などで造るものもあります。ただし、麦を使わない製品でも、製造ラインの共有などによる交差接触(調理中や製造中の混入)については、表示からは分かりません。原材料欄を確かめてください。

小麦アレルギーの人が気をつけたいのは、白ビールです。ベルギーのホワイトエールやドイツのヴァイツェンの流れをくむビールは、大麦に加えて小麦を使います。たとえば、ある国産のホワイトエールの原材料欄には「麦芽(大麦麦芽、小麦麦芽)、ホップ、小麦、…」と書かれています。クラフトビールの店では、こうしたビールが普通に並んでいます。

ノンアルコールビールも、多くが麦芽を使っています。たとえば、サントリーの「オールフリー」の原材料は麦芽とホップなどです。一方、アサヒの「ドライゼロ」は麦芽を使わず、食物繊維、大豆ペプチド、ホップなどで造られています。原材料に麦は入っていません。一方で、大豆アレルギーの人は気をつける必要があります。上に書いたとおり、製造ラインを麦の製品と共有しているかどうかは、表示からは分かりません。原材料は変わることがあるので、そのたびに缶で確かめてください。

海外では、日本のビールが「ライスビール(米のビール)」と呼ばれることがあります。日本の大手のビールには、麦芽に加えて米やコーンを副原料に使うものがあるからです。たとえば、アサヒの「スーパードライ」の原材料は「麦芽、ホップ、米、コーン、スターチ」です。米が入っていても、主な原料は大麦の麦芽なので、グルテンフリーではありません。一方、キリンの「一番搾り」の原材料は麦芽とホップだけです。どちらにしても、「米を使っている」ことは「麦を使っていない」ことを意味しません。

居酒屋には、ホッピーという飲みものもあります。麦芽とホップで造った、ビールのような味の飲みもので、アルコール分は1%未満です。ジョッキに焼酎を入れ、ホッピーを注いで飲むのが定番です。焼酎は蒸留酒でも、ホッピーには麦芽が入っています。

焼酎・ウイスキー・ジン・ウォッカ:蒸留酒

麦焼酎は大麦から、ウイスキーは大麦の麦芽などから造られます。それでも、イギリスのセリアック病の患者団体 Coeliac UK は、大麦から造るモルトウイスキーも含めて、すべての蒸留酒はセリアック病の人も飲めるとしています。アメリカの Beyond Celiac も、小麦・大麦・ライ麦から造ったものでも、純粋な蒸留酒はグルテンフリーと見ています。蒸留の過程で、グルテンのたんぱく質が残らないと考えられているからです。

ただし、Beyond Celiac は、蒸留したあとに香料などを加えたお酒には、グルテンが隠れていることがあると注意しています。そして、日本の居酒屋で焼酎を頼むと、たいてい何かで割って出てきます。気をつけるべきなのは、焼酎そのものより、割り材のほうです。

主な団体が飲めると言っていても、それでも蒸留酒を避けると決めている人もいます。どこまでを自分の線にするかは、あなたと主治医が決めることです。

日本酒とワイン

日本酒は、米と米麹を基本に造られ、小麦や大麦を使わないのが一般的です。清酒は「清酒の製法品質表示基準」で原材料名を表示することになっているので、ラベルの「原材料名」の欄で確かめられます。ワインやシードルについても、Coeliac UK はグルテンフリーとしています。

紹興酒とマッコリ:小麦を使うお酒

日本のお店で飲めるお酒には、中国や韓国のお酒もあります。ここには、小麦を使うものがあります。

中華料理店でよく出る紹興酒は、もち米と小麦を原料にした中国のお酒です。国税庁の説明でも、原料として小麦が挙げられています。紹興酒は蒸留しない醸造酒なので、セリアック病の人だけでなく、小麦アレルギーの人も注意が必要です。中華料理では、紹興酒が料理の味付けに使われることもあります。

韓国料理店で出るマッコリも、米や小麦と麹から造られる醸造酒です。製品によって、米だけのものもあれば、小麦や麦の麹を使うものもあります。ボトルの原材料を見せてもらうのが確かです。

割り材とカクテル:見落としやすいところ

江戸時代の浮世絵。満開の桜の並木の下、隅田川の土手を大勢の人が行き交っている
歌川広重「東都名所 隅田堤花見之図」。桜の季節、江戸の人びとは川沿いの土手に集まって花見を楽しんだ。 歌川広重「東都名所 隅田堤花見之図」(1848〜54年頃)/アメリカ議会図書館/パブリックドメイン 出典

日本の居酒屋では、焼酎をお茶やソーダ、果汁で割った「サワー」や「ハイ」がよく飲まれます。ウーロンハイ(ウーロン茶割り)や緑茶ハイ(緑茶割り)のほかに、麦茶割りを置いている店もあります。メニューに「お茶割り」とだけ書いてある場合は、何のお茶かを聞いてください。

ビールを使ったカクテルにも注意が必要です。シャンディガフはビールとジンジャーエール、レッドアイはビールとトマトジュースで作ります。名前だけでは、ビールが入っていると分からないことがあります。

「とりあえずビール」の一杯目

日本の飲み会では、最初の一杯をそろえて乾杯するのが一般的です。「とりあえずビール」という言葉があるほど、一杯目はビールになりがちです。

ビールを飲めない人は、席に着く前、あるいは最初の注文のときに、自分の一杯を決めておくと楽です。ウーロン茶や、原材料を確かめたノンアルコールビール、日本酒、焼酎のソーダ割りなど、乾杯に使える飲みものはたくさんあります。

小麦アレルギーの人と、セリアック病の人で、気をつける点が違う

食の制限には、大きく分けて2つの線があります。原材料に入っていなければ足りる人の線(わずかな交差接触は問題にならない)と、わずかな交差接触まで避ける必要がある人の線です。お酒の場合は、どの穀物を避けるかによっても、気をつけるお酒が変わります。

小麦アレルギーの人が気をつけたいのは、小麦を使うお酒です。白ビール、紹興酒、一部のマッコリがこれにあたります。大麦については、大麦・ライ麦・オーツ麦の記事に書いたとおり、食べられる場合も多いとされていますが、どこまで飲めるかは主治医に確かめてください。

もう一つ、小麦アレルギーの人に知っておいてほしいことがあります。食べたあとに運動することで症状が出る「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」では、小麦がよく原因になります。そして、アルコールは症状を起こしやすくする要因の一つに挙げられています。小麦を使った料理を食べながらお酒を飲む場面では、お酒の原材料だけでなく、飲むこと自体についても、主治医の指示に従ってください。

セリアック病の人が気をつけたいのは、小麦を使うお酒(白ビール、紹興酒、一部のマッコリ)に加えて、大麦を使うお酒です。ビール、発泡酒、多くのノンアルコールビール、ホッピー、そして麦茶割りやビールのカクテルがこれにあたります。蒸留酒は、主な団体がグルテンフリーと見ています。

店で使える日本語フレーズ

このお酒に、小麦や大麦は入っていますか?
Kono osake ni, komugi ya ōmugi wa haitte imasu ka?
Does this drink contain wheat or barley?
ボトル(缶)の原材料を見せてもらえますか?
Botoru (kan) no genzairyō o misete moraemasu ka?
Could I see the ingredients on the bottle (can)?
この「お茶割り」は、何のお茶ですか? 麦茶ですか?
Kono “ocha-wari” wa, nan no ocha desu ka? Mugicha desu ka?
What tea is in this tea highball? Is it barley tea?
乾杯は、ウーロン茶でお願いします。
Kanpai wa, ūroncha de onegai shimasu.
I'll have oolong tea for the toast, please.

伝え方の全体は、日本の飲食店でアレルギーを伝える方法にまとめています。

WE TABLEの考え方

日本の飲食店では、料理については確かめても、飲みものまでは確かめないことがよくあります。お酒は表示の義務がなく、グラスで出てくるので、なおさら見えにくい存在です。だから私たちは、料理と同じように、飲みものも事前に確かめることをすすめています。JOURNEYでは、飲みものについては、当日シェフに直接確かめます。お店の飲みものは種類が多く、入れ替わりもあるので、すべてを事前に確かめることはできないからです。確かめられたことと確かめきれなかったことは、そのまま伝えます。私たちは「安全です」とは言いません。言えるのは、何をどこまで確かめたか、です。

よくある質問

日本のビールはグルテンフリーですか?

いいえ。日本のビールと発泡酒の多くは、大麦の麦芽を原料にしています。白ビールなど、小麦や小麦麦芽を使うものもあります。日本では、グルテンフリーのビールはほとんど見かけません。

ノンアルコールビールはグルテンフリーですか?

日本のノンアルコールビールの多くは、麦芽や麦芽エキスを使っています。麦芽を使わない製品もありますが、その代わりに大豆ペプチドなどを使っていることがあります。缶の原材料欄で確かめてください。

焼酎はグルテンフリーですか?

焼酎は蒸留酒です。Coeliac UK や Beyond Celiac は、麦から造ったものも含めて、純粋な蒸留酒をグルテンフリーと見ています。ただし、蒸留後に加える香料などや、麦茶割りのような割り材には注意が必要です。最終的な判断は、主治医と相談してください。

日本酒はグルテンフリーですか?

日本酒は、米と米麹を基本に造られ、小麦や大麦は使わないのが一般的です。日本酒(清酒)は、国税庁の「清酒の製法品質表示基準」で原材料名を表示することになっているので、ラベルで確かめられます。

日本のお酒には、アレルギー表示がありますか?

食品表示基準では、酒類にアレルギー表示と原材料名の表示の義務はありません。ただし、清酒は国税庁の「清酒の製法品質表示基準」で、ビールは「ビールの表示に関する公正競争規約」で、原材料名を表示します。それでも、「(一部に小麦を含む)」のようなアレルギー表示は基本的にありません。

出典

  1. 国税庁「酒類の表示に関するQ&A」別冊(食品表示基準と酒類)
  2. 消費者庁「食品表示基準について」(アレルゲン表示とアルコール類)
  3. 杏林大学医学部付属病院 栄養部「食物アレルギー表示について」
  4. 「ビールの表示に関する公正競争規約及び施行規則」(全国公正取引協議会連合会)
  5. 国税庁「清酒の製法品質表示基準」(「酒類の表示の基準における重要基準を定める件」の概要)
  6. 国税庁 東京国税局「お酒のABC その他の酒」(紹興酒)
  7. 現代ビジネス「マッコリ」記事(原料について)
  8. 国税庁「酒のしおり」酒税の税率(新ジャンルの発泡酒への編入)
  9. Coeliac UK「Alcohol」
  10. Beyond Celiac「Which Alcohols Are Gluten-Free?」
  11. 食品安全委員会 季刊誌 vol.62(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)
  12. 国立病院機構 天竜病院「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」講演資料
  13. GetNavi web「ホッピー」記事(原材料とアルコール分)
  14. Regulation (EU) No 1169/2011(食品情報の消費者への提供)
  15. Business Companion(英国 Trading Standards)「Alcoholic beverages and alcohol in food」
  16. Federal Register「Major Food Allergen Labeling for Wines, Distilled Spirits, and Malt Beverages」(TTB 規則案、2025年)
  17. FSANZ「Allergen labelling exemptions」
  18. Perennia「NSLC Beer Fact Sheet 2025」(カナダのビール表示)
  19. 常陸野ホワイトエール 商品ページ(原材料)
  20. サントリー オールフリー 商品ページ(原材料)
  21. アサヒ ドライゼロ 商品ページ(原材料)
  22. アサヒ スーパードライ 商品ページ(原材料)
  23. キリン 一番搾り 商品ページ(原材料)