大麦・ライ麦・オーツ麦はグルテンフリー? 麦茶・もち麦・麦みその話

大麦・ライ麦・オーツ麦はグルテンフリー?
まず、結論を表にまとめます。
| 穀物 | 主なたんぱく質 | セリアック病の人は? | 欧米の制度での「グルテン」 | 日本のアレルギー表示 |
|---|---|---|---|---|
| 小麦 | グリアジン・グルテニン | 反応する | 含まれる | 義務あり |
| 大麦 | ホルデイン | 反応する | 含まれる | 義務も推奨もない |
| ライ麦 | セカリン | 反応する | 含まれる | 義務も推奨もない |
| オーツ麦 | アベニン | 反応する人は少ない。ただし混入が多い | 国によって違う | 義務も推奨もない |
「グルテン」という言葉は、もともと小麦のたんぱく質を指します。
グリアジン + グルテニン = グルテン
小麦粉に含まれるこの2つのたんぱく質が、水を加えてこねることでつながり、粘りと弾力のある「グルテン」になります。大麦のホルデイン、ライ麦のセカリン、オーツ麦のアベニンは、小麦のグリアジンとよく似たたんぱく質ですが、名前が違い、パンをふくらませるような粘りもほとんどありません。
それでも、アメリカ・EU・オーストラリアなどの制度は、セリアック病の人が反応するかどうかで「グルテン」の範囲を決めています。だから大麦やライ麦のたんぱく質も、制度のうえでは「グルテン」です。一方、日本で「グルテン」と言えば、多くの人はパンや麺の粘りのもと、つまり小麦を思い浮かべます。この言葉のずれについては、日本の「グルテンフリー」は、アメリカやEUと意味が違うで詳しく書きました。

日本の大麦は、どこにいる?
大麦は、日本の食卓のすぐそばにあります。しかも日本では、大麦はアレルギー表示の対象ではありません。原材料の欄に「大麦」や「麦芽」と書かれていれば分かりますが、小麦のように目立つ形で示されることはありません。加工食品では、「麦芽エキス」「麦芽水飴」「モルトエキス」なども、ほとんどは大麦から作られる原料です。ビールなどのお酒の麦芽については、日本のお酒はグルテンフリー?にまとめています。原材料欄で探す言葉として覚えておいてください。なお、原材料やアレルギーが表示されるのは容器包装された加工食品で、飲食店の料理や量り売りの惣菜には表示の義務がありません(アレルギー表示の義務はどこまで?)。
| どこ | 大麦の入り方 |
|---|---|
| 麦茶 | 炒った大麦を煮出したお茶。夏を中心に、家庭でも飲食店でも水代わりに出てくる |
| 麦ごはん・もち麦ごはん | 白米に押麦やもち麦(大麦)を混ぜて炊く |
| 麦みそ | 大麦や裸麦の麹で造るみそ。九州や中国・四国などで造られる |
| 加工食品 | 麦芽エキス、麦芽水飴、モルトエキスなどの原料として |
日本語の「麦」は、ふつう大麦も小麦も含む言葉です。ただ、麦茶、押麦、麦みその「麦」は大麦で、麦飯もふつうは大麦を混ぜて炊きます。「麦」の一文字だけでは、どちらの麦か分からないことがあります。逆に、「ハトムギ」は名前に「麦」が付きますが、グルテンを含む穀物ではありません。名前だけで判断できないことも覚えておいてください。
麦茶:夏の食卓にある、見えない大麦
麦茶は、日本の夏の定番の飲みものです。冷蔵庫には麦茶のポットが入り、食堂や定食屋では、水の代わりに冷たい麦茶が出てくることも珍しくありません。

麦茶の原料は、炒った大麦です。大麦はグルテンフリーではないので、麦茶もグルテンフリーとしては扱われません。お茶にどれだけたんぱく質が溶け出すかについては、公的なデータを見つけることができませんでした。分からない以上、大麦まで避ける必要がある人は、避ける判断がいちばん確かです。
大麦は日本の表示義務の外にいるので、誰も警告してくれない。「お茶です」と出されたら、緑茶か麦茶かを確認する価値がある。
色だけでは見分けにくいこともあります。ほうじ茶も、麦茶と同じような茶色をしています。さらに、ペットボトルや店で出る「ブレンド茶」には、大麦や麦芽が入っているものがあります。確かめるべきなのは、緑茶か麦茶かだけではありません。
もち麦:健康ブームの大麦
ここ数年、日本では「もち麦」が人気です。もち麦は、もちもちした食感の大麦の一種で、食物繊維(大麦β-グルカン)が多いことから、健康のために白米に混ぜて炊く家庭が増えました。
外食でも、健康志向の定食屋やカフェ、和食店で、ごはんにもち麦や押麦を混ぜていることがあります。見た目は白米に少し粒が混じっている程度で、言われなければ気づかないこともあります。セリアック病の人は、ごはんにも麦が入っていないかを確かめてください。
オーツ麦:アベニンと、混入の問題
オーツ麦(えん麦)のたんぱく質は、アベニンと呼ばれます。小麦・大麦・ライ麦のたんぱく質に比べて量が少なく、セリアック病の人が反応しにくいことが分かっています。オーストラリアのセリアック病の患者団体は、混入のないオーツ麦で症状が出る人は1割未満と推定しています。
問題は、混入です。ふつうに流通しているオーツ麦は、畑や工場で小麦や大麦が混ざっていることが多くあります。そのため、国によって扱いが分かれています。
- EU・イギリス・カナダ:小麦などの混入を防ぐように作り、20ppm以下にしたオーツ麦は「グルテンフリー」と表示できる
- アメリカ:最終製品が20ppm未満であれば、オーツ麦も「グルテンフリー」と表示できる(作り方の条件はない)
- オーストラリア・ニュージーランド:オーツ麦を「グルテンフリー」と表示することはできない
日本でもオートミールの人気が高まっていますが、日本には「グルテンフリー」の法的な基準がありません。オーツ麦を食べられるかどうかは、主治医と相談して決め、混入を防いだ製品かどうかを確かめてください。
小麦アレルギーの人は、大麦を食べられる?
食の制限には、大きく分けて2つの線があります。原材料に入っていなければ足りる人の線と、交差接触(調理中の混入)まで避ける必要がある人の線です。どちらの線に立つかで、大麦との付き合い方も変わります。
原材料として小麦を避ければ足りる人、たとえば小麦アレルギーの人でも、大麦を食べられる場合があるとされています。小麦と大麦・ライ麦・オーツ麦のたんぱく質には似た部分(交差抗原性)がありますが、症状なく食べられる場合もあり、小麦アレルギーだからといって麦類全般を除く必要はないとされています。麦茶については、飲めることがほとんどだとされています。私が本のために話を聞いた、10年以上小麦アレルギーと付き合ってきた女性も、麦茶ももち麦も平気だと話していました。ただし、それは彼女が医師と確かめてきた、彼女自身の線です。あなたの線は、主治医と決めてください。
セリアック病などで、大麦やライ麦まで避ける必要がある人にとって、日本の大麦は、表示に現れない分だけ見落としやすい存在です。麦茶、麦ごはん、麦みそ、そして加工食品の麦芽。この4つは、日本で食事をするたびに意識しておいてください。
店で使える日本語フレーズ
伝え方の全体は、日本の飲食店でアレルギーを伝える方法にまとめています。
WE TABLEの考え方
日本の店で「グルテン」と言っても、多くの場合、相手が思い浮かべるのは小麦だけです。大麦は、麦茶やもち麦ごはんとして、悪意なく、ごく自然にテーブルに置かれます。だから私たちは、「グルテン」という一語ではなく、「小麦・大麦・ライ麦」と穀物の名前で伝えることをすすめています。JOURNEYでは、ごはんやお茶、調味料まで含めて、何に麦が入っているかを事前にシェフと確かめ、どこまで分けられたかをそのまま開示します。私たちは「安全です」とは言いません。言えるのは、何をどこまで確かめたか、です。
よくある質問
大麦はグルテンフリーですか?
いいえ。大麦にはホルデインというたんぱく質が含まれ、セリアック病の人が反応します。アメリカ・EU・オーストラリアなどの制度では、大麦のたんぱく質も「グルテン」に含まれます。
麦茶(大麦の茶)はグルテンフリーですか?
麦茶は炒った大麦から作るので、グルテンフリーとしては扱われません。お茶にどれだけたんぱく質が溶け出すかについて、公的なデータは見つかっていません。小麦アレルギーの人は、麦茶を飲めることがほとんどだとされています。
オーツ麦はグルテンフリーですか?
オーツ麦のたんぱく質(アベニン)に反応するセリアック病の人は1割未満と推定されていますが、ふつうのオーツ麦は小麦や大麦が混ざっていることが多いです。EU・イギリス・カナダでは混入を防いで作り20ppm以下にしたもの、アメリカでは最終製品が20ppm未満のものはグルテンフリーと表示できますが、オーストラリアとニュージーランドでは表示できません。
小麦アレルギーの人は大麦を食べられますか?
小麦と大麦には交差抗原性がありますが、症状なく食べられる場合もあり、小麦アレルギーだからといって麦類全般を除く必要はないとされています。どこまで食べられるかは主治医の指示に従ってください。
出典
- Daly M, et al.「Mapping Coeliac Toxic Motifs in the Prolamin Seed Storage Proteins of Barley, Rye, and Oats Using a Curated Sequence Database」Frontiers in Nutrition(2020)
- eCFR「21 CFR 101.91 Gluten-free labeling of food」(アメリカ)
- Commission Implementing Regulation (EU) No 828/2014
- Food Standards Code の gluten の定義(New Zealand Gazette, 2015)
- Coeliac Australia「Oats and the gluten free diet」
- Beyond Celiac「Is Barley Gluten-Free?」
- 国立病院機構 小倉医療センター「小麦アレルギーの方へ」
- 厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」(麦茶と小麦アレルギー)
- Health Canada「Gluten-free labelling claims for products containing specially produced gluten-free oats」
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
- コトバンク「麦」(デジタル大辞泉・世界大百科事典ほか)
- 愛媛県「えひめの麦みそ」研究資料
- 近畿経済産業局「もち麦」資料(大麦β-グルカン・作付と販売の推移)
- 小林大樹『Gluten-Free Japan: Between the Kitchen and the Table』(近刊)



