大麦・ライ麦・オーツ麦はグルテンフリー? 麦茶・もち麦・麦みその話

明治時代の手彩色写真。実った大麦の畑で、菅笠をかぶった人たちが鎌で麦を刈り、刈った麦が畝に沿って並べられている
大麦を刈る人たち。明治の日本では、大麦は米と並ぶ大切な穀物だった。 日下部金兵衛「Cutting Barley」(手彩色写真、明治時代)/パブリックドメイン 出典

大麦・ライ麦・オーツ麦はグルテンフリー?

まず、結論を表にまとめます。

穀物 主なたんぱく質 セリアック病の人は? 欧米の制度での「グルテン」 日本のアレルギー表示
小麦 グリアジン・グルテニン 反応する 含まれる 義務あり
大麦 ホルデイン 反応する 含まれる 義務も推奨もない
ライ麦 セカリン 反応する 含まれる 義務も推奨もない
オーツ麦 アベニン 反応する人は少ない。ただし混入が多い 国によって違う 義務も推奨もない

「グルテン」という言葉は、もともと小麦のたんぱく質を指します。

グリアジン + グルテニン = グルテン

小麦粉に含まれるこの2つのたんぱく質が、水を加えてこねることでつながり、粘りと弾力のある「グルテン」になります。大麦のホルデイン、ライ麦のセカリン、オーツ麦のアベニンは、小麦のグリアジンとよく似たたんぱく質ですが、名前が違い、パンをふくらませるような粘りもほとんどありません。

それでも、アメリカ・EU・オーストラリアなどの制度は、セリアック病の人が反応するかどうかで「グルテン」の範囲を決めています。だから大麦やライ麦のたんぱく質も、制度のうえでは「グルテン」です。一方、日本で「グルテン」と言えば、多くの人はパンや麺の粘りのもと、つまり小麦を思い浮かべます。この言葉のずれについては、日本の「グルテンフリー」は、アメリカやEUと意味が違うで詳しく書きました。

江戸時代の植物画。白い紙に、穂の形の違う数種類の麦や稲が並べて描かれ、名前を書いた小さな紙片が添えられている
麦や稲を描き分けた江戸時代の植物画。大麦、小麦、カラスムギ(オーツ麦の仲間)、稲などが並ぶ。 石崎融思(1817〜1823年頃)/ナチュラリス生物多様性センター(オランダ)/パブリックドメイン 出典

日本の大麦は、どこにいる?

大麦は、日本の食卓のすぐそばにあります。しかも日本では、大麦はアレルギー表示の対象ではありません。原材料の欄に「大麦」や「麦芽」と書かれていれば分かりますが、小麦のように目立つ形で示されることはありません。加工食品では、「麦芽エキス」「麦芽水飴」「モルトエキス」なども、ほとんどは大麦から作られる原料です。ビールなどのお酒の麦芽については、日本のお酒はグルテンフリー?にまとめています。原材料欄で探す言葉として覚えておいてください。なお、原材料やアレルギーが表示されるのは容器包装された加工食品で、飲食店の料理や量り売りの惣菜には表示の義務がありません(アレルギー表示の義務はどこまで?)。

どこ 大麦の入り方
麦茶 炒った大麦を煮出したお茶。夏を中心に、家庭でも飲食店でも水代わりに出てくる
麦ごはん・もち麦ごはん 白米に押麦やもち麦(大麦)を混ぜて炊く
麦みそ 大麦や裸麦の麹で造るみそ。九州や中国・四国などで造られる
加工食品 麦芽エキス、麦芽水飴、モルトエキスなどの原料として

日本語の「麦」は、ふつう大麦も小麦も含む言葉です。ただ、麦茶、押麦、麦みその「麦」は大麦で、麦飯もふつうは大麦を混ぜて炊きます。「麦」の一文字だけでは、どちらの麦か分からないことがあります。逆に、「ハトムギ」は名前に「麦」が付きますが、グルテンを含む穀物ではありません。名前だけで判断できないことも覚えておいてください。

麦茶:夏の食卓にある、見えない大麦

麦茶は、日本の夏の定番の飲みものです。冷蔵庫には麦茶のポットが入り、食堂や定食屋では、水の代わりに冷たい麦茶が出てくることも珍しくありません。

グラスに注がれた、琥珀色の冷たい麦茶
麦茶。香ばしい琥珀色のお茶で、日本では夏に水のように飲まれている。 写真:Corpse Reviver(Wikimedia Commons)/CC0 出典

麦茶の原料は、炒った大麦です。大麦はグルテンフリーではないので、麦茶もグルテンフリーとしては扱われません。お茶にどれだけたんぱく質が溶け出すかについては、公的なデータを見つけることができませんでした。分からない以上、大麦まで避ける必要がある人は、避ける判断がいちばん確かです。

大麦は日本の表示義務の外にいるので、誰も警告してくれない。「お茶です」と出されたら、緑茶か麦茶かを確認する価値がある。

近刊『Gluten-Free Japan』第4章より

色だけでは見分けにくいこともあります。ほうじ茶も、麦茶と同じような茶色をしています。さらに、ペットボトルや店で出る「ブレンド茶」には、大麦や麦芽が入っているものがあります。確かめるべきなのは、緑茶か麦茶かだけではありません。

もち麦:健康ブームの大麦

ここ数年、日本では「もち麦」が人気です。もち麦は、もちもちした食感の大麦の一種で、食物繊維(大麦β-グルカン)が多いことから、健康のために白米に混ぜて炊く家庭が増えました。

外食でも、健康志向の定食屋やカフェ、和食店で、ごはんにもち麦や押麦を混ぜていることがあります。見た目は白米に少し粒が混じっている程度で、言われなければ気づかないこともあります。セリアック病の人は、ごはんにも麦が入っていないかを確かめてください。

オーツ麦:アベニンと、混入の問題

オーツ麦(えん麦)のたんぱく質は、アベニンと呼ばれます。小麦・大麦・ライ麦のたんぱく質に比べて量が少なく、セリアック病の人が反応しにくいことが分かっています。オーストラリアのセリアック病の患者団体は、混入のないオーツ麦で症状が出る人は1割未満と推定しています。

問題は、混入です。ふつうに流通しているオーツ麦は、畑や工場で小麦や大麦が混ざっていることが多くあります。そのため、国によって扱いが分かれています。

  • EU・イギリス・カナダ:小麦などの混入を防ぐように作り、20ppm以下にしたオーツ麦は「グルテンフリー」と表示できる
  • アメリカ:最終製品が20ppm未満であれば、オーツ麦も「グルテンフリー」と表示できる(作り方の条件はない)
  • オーストラリア・ニュージーランド:オーツ麦を「グルテンフリー」と表示することはできない

日本でもオートミールの人気が高まっていますが、日本には「グルテンフリー」の法的な基準がありません。オーツ麦を食べられるかどうかは、主治医と相談して決め、混入を防いだ製品かどうかを確かめてください。

小麦アレルギーの人は、大麦を食べられる?

食の制限には、大きく分けて2つの線があります。原材料に入っていなければ足りる人の線と、交差接触(調理中の混入)まで避ける必要がある人の線です。どちらの線に立つかで、大麦との付き合い方も変わります。

原材料として小麦を避ければ足りる人、たとえば小麦アレルギーの人でも、大麦を食べられる場合があるとされています。小麦と大麦・ライ麦・オーツ麦のたんぱく質には似た部分(交差抗原性)がありますが、症状なく食べられる場合もあり、小麦アレルギーだからといって麦類全般を除く必要はないとされています。麦茶については、飲めることがほとんどだとされています。私が本のために話を聞いた、10年以上小麦アレルギーと付き合ってきた女性も、麦茶ももち麦も平気だと話していました。ただし、それは彼女が医師と確かめてきた、彼女自身の線です。あなたの線は、主治医と決めてください。

セリアック病などで、大麦やライ麦まで避ける必要がある人にとって、日本の大麦は、表示に現れない分だけ見落としやすい存在です。麦茶、麦ごはん、麦みそ、そして加工食品の麦芽。この4つは、日本で食事をするたびに意識しておいてください。

店で使える日本語フレーズ

このお茶は、麦茶ですか? 緑茶ですか?
Kono ocha wa, mugicha desu ka? Ryokucha desu ka?
Is this tea barley tea or green tea?
ごはんに、麦(もち麦・押麦)は入っていますか?
Gohan ni, mugi (mochimugi, oshimugi) wa haitte imasu ka?
Is there any barley mixed into the rice?
このみそは、麦みそですか?
Kono miso wa, mugi-miso desu ka?
Is this miso made with barley?
小麦だけでなく、大麦とライ麦も食べられません。
Komugi dake de naku, ōmugi to raimugi mo taberaremasen.
I can't eat barley or rye, as well as wheat.

伝え方の全体は、日本の飲食店でアレルギーを伝える方法にまとめています。

WE TABLEの考え方

日本の店で「グルテン」と言っても、多くの場合、相手が思い浮かべるのは小麦だけです。大麦は、麦茶やもち麦ごはんとして、悪意なく、ごく自然にテーブルに置かれます。だから私たちは、「グルテン」という一語ではなく、「小麦・大麦・ライ麦」と穀物の名前で伝えることをすすめています。JOURNEYでは、ごはんやお茶、調味料まで含めて、何に麦が入っているかを事前にシェフと確かめ、どこまで分けられたかをそのまま開示します。私たちは「安全です」とは言いません。言えるのは、何をどこまで確かめたか、です。

よくある質問

大麦はグルテンフリーですか?

いいえ。大麦にはホルデインというたんぱく質が含まれ、セリアック病の人が反応します。アメリカ・EU・オーストラリアなどの制度では、大麦のたんぱく質も「グルテン」に含まれます。

麦茶(大麦の茶)はグルテンフリーですか?

麦茶は炒った大麦から作るので、グルテンフリーとしては扱われません。お茶にどれだけたんぱく質が溶け出すかについて、公的なデータは見つかっていません。小麦アレルギーの人は、麦茶を飲めることがほとんどだとされています。

オーツ麦はグルテンフリーですか?

オーツ麦のたんぱく質(アベニン)に反応するセリアック病の人は1割未満と推定されていますが、ふつうのオーツ麦は小麦や大麦が混ざっていることが多いです。EU・イギリス・カナダでは混入を防いで作り20ppm以下にしたもの、アメリカでは最終製品が20ppm未満のものはグルテンフリーと表示できますが、オーストラリアとニュージーランドでは表示できません。

小麦アレルギーの人は大麦を食べられますか?

小麦と大麦には交差抗原性がありますが、症状なく食べられる場合もあり、小麦アレルギーだからといって麦類全般を除く必要はないとされています。どこまで食べられるかは主治医の指示に従ってください。

出典

  1. Daly M, et al.「Mapping Coeliac Toxic Motifs in the Prolamin Seed Storage Proteins of Barley, Rye, and Oats Using a Curated Sequence Database」Frontiers in Nutrition(2020)
  2. eCFR「21 CFR 101.91 Gluten-free labeling of food」(アメリカ)
  3. Commission Implementing Regulation (EU) No 828/2014
  4. Food Standards Code の gluten の定義(New Zealand Gazette, 2015)
  5. Coeliac Australia「Oats and the gluten free diet」
  6. Beyond Celiac「Is Barley Gluten-Free?」
  7. 国立病院機構 小倉医療センター「小麦アレルギーの方へ」
  8. 厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」(麦茶と小麦アレルギー)
  9. Health Canada「Gluten-free labelling claims for products containing specially produced gluten-free oats」
  10. 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
  11. コトバンク「麦」(デジタル大辞泉・世界大百科事典ほか)
  12. 愛媛県「えひめの麦みそ」研究資料
  13. 近畿経済産業局「もち麦」資料(大麦β-グルカン・作付と販売の推移)
  14. 小林大樹『Gluten-Free Japan: Between the Kitchen and the Table』(近刊)